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けわしい天ぷら屋

家からすぐ近くの商店街に天ぷら屋があります。
天ぷら屋といっても店頭販売だけをやっているお店でして、
代々続いてそうなけっこう古い店構えです。
その天ぷら屋は天ぷらとともに生麺を売っています。
それが結構安いので、
「買いたいなぁ」とずーっと思っています。
京都に引っ越してきてから前を通るたびに「買いたいな」と思い続け、
はや三年が経ちました。
ここで、
「なんで三年も買えてないのだ?」
という疑問がわいてきたことでしょう。
お答えします。
なぜ私が生麺を買えてないのかと言えば、
「天ぷら屋のご主人の顔がけわしいから」です。
ご主人はいつもけわしい顔で一点を見つめ店頭に立っています。
前を通るたび、
「今日もけわしいな。」
と確認し、
生麺をあきらめてきました。
「あれだけけわしいんだからしょうがないな。」
と自分に言い聞かせ、
生麺をあきらめてきました。
正直に話しますと、
たまにご主人のお父上と思しきご老人が店頭に立っているときもあります。
私は勝手にその人のことを「大旦那」と呼んでいますが、
「大旦那が店頭に立っているときは生麺を買わない」
というルールを自分に課していました。
大旦那のときに買っても自分は成長できない、
けわしいご主人を乗り越えてこそ意味がある、
そう思ってきたからです。
もう三年が経ちました。
そろそろこのけわしい道のりを越えなければいけません。
~続く~

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